東京高等裁判所 平成2年(ネ)1302号 判決
旧民法は、後見人に対する必置の監督機関として後見監督人の制度を設けた(同法九一〇条以下)。これは、合議機関である親族会だけでは後見人を不断に監視して被後見人の利益を十分に保護することができないことを考慮したものである。親族会において後見人を選任したときは、直ちに後見監督人を選任することを要し(同法九一一条二項)、後見人の配偶者、直系血族又は兄弟姉妹は後見監督人になることができない(同法九一四条)。後見監督人は、職務の一として「後見人又ハ其代表スル者ト被後見人トノ利益相反スル行為ニ付キ被後見人ヲ代表スル」ものとされている(同法九一五条四号)。この規定は、後見人が数人の被後見人に対して後見を行う場合において、その一人と他の被後見人との利益が相反する場合にも適用され、後見監督人がその一方の被後見人を代理するものと解すべきである。なお、親権者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益相反行為については、その一方のため親族会が特別代理人を選任することになっていた(同法八八八条)。
これを本件についてみるに、本件贈与契約は、三郎の後見人と準平の特別代理人信枝との間で締結されているが、旧民法に従えば、このような場合には、後見監督人の適格を有する者の中から適法に選任された後見監督人が被後見人の一人を代理して締結すべきものであるから、本件贈与契約に関しては、後見監督人ではなく特別代理人を選任した点及び後見監督人の適格を有しないの二女信枝を選任した点において、旧民法に明らかに抵触する。したがって、信枝によって締結された本件贈与契約は、無権代理行為として無効であるといわざるを得ないから、被控訴人の本件贈与契約による所有権取得の主張は採用できない。
(藤井 大藤 水谷)